愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「・・・・・・ちょっと待ってよ榊・・・」

空しく零れた独り言。

今のわざと怒らせたの・・・? 
あたしがどう言うかなんて最初から分かってたから?
『信じて』たから?

自分が悪者になっても?

真に聞かせる・・・ため?


はっとして振り返った。リビングに繋がる扉のアクリルガラス越しに透ける黒い影。近寄っていってドアハンドルに手をかけ、おずおずと自分の方へ引く。と。右側の松葉杖を床に突き立てたまま真が立ってた。

あたしが歪めた唇を開くより先に、物憂げに前髪を掻き上げる仕草で溜息を吐く。

「・・・俊哉のお節介なんかいらねーのに、ったく」

苦そうに。・・・痛そうに。


「オレより先に宮子を泣かすなバーカ・・・」


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