愛は、つらぬく主義につき。 ~2
『それで? 正真正銘、奥さんになった感想は?』

悪戯っぽく紗江に訊かれた。
半年も一緒に暮らしてるし、今日から新婚生活!・・・っていう浮き浮き感よりはやっぱり。

「身が引き締まったってカンジだよ。もう本家の一人娘じゃなくて、一ツ橋組の若頭代理補佐の妻として臼井の家を継ぐんだしね」



市役所に届けを出しに行く前、実家の応接間で。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、哲っちゃん、瑤子ママ、仁兄に向かって折り目正しく挨拶した真の横顔は、なんの揺らぎもなく堂々としてた。

お父さんに『宮子を頼む』って頭を下げられ、一度あたしを振り返ってから『オレの命は最期まで、その為に使わせてもらいます』って真が淡く笑んだとき、思わず顔が歪んだ。

子供の頃の誓いを果たす。
何があってもつらぬく意地を通す。
たとえ歩けずに這いずってでも。

・・・覚悟が伝わってきた。言われてなくても届いた。
“幸せにします”よりずっと奥まで染みて、涙が堪えきれなかった。

『泣くの早いねぇ』

泣かせた本人に澄まし顔で言われ。榊の運転で市役所に連れてかれた帰りの車の中で、さらに泣かされた。


『・・・オヤジの息子でよかった。オマエが生まれてきてくれて、よかった。オレを幸せにしてくれて、・・・ありがとな宮子』

あたしの頭を抱き寄せて撫でながら、愛おしむみたいな優しい声で。小さく鼻をすすったのが聞こえた瞬間。

堰が切れて。大号泣した。
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