愛は、つらぬく主義につき。 ~2
スーツジャケットのポケットから手帳型ケース入りのスマホを取り出し、テーブルの端に置いてみせた。

「今は電源を落としてます。1時間だけ切っておくって千也さんに約束したから」

「君の好きにすればいいさ。でも料理に罪はないし、食べながらでも話はできるだろ? 訊きたいことがあるなら今のうちだよ」

事も無げに言い高津さんは、白いボール皿のフリルレタスにフォークを刺す。

結局、彼のペースに乗せられたまま、あたしは半ば開き直りの境地でナプキンを手に取った。オーダーも先に済ませとくとか、ほんと抜かりない。毒を食らわば皿までってことわざは、こうやって正しく使えばいいワケね?

人参色のドレッシングがかかったグリーンサラダを口に運びながら、取りあえず高津さんの出方を待ってみる気になった。こんなトコで、あたしをどうこうできないだろうし。

「・・・日本を出るって聞きました」

濃厚なコーンクリームのスープを半分ほどお腹に収めてから、訊ねた。

「帰ってこないつもりなんですか」

「この国にいても退屈だからね。シンガポール辺りを拠点にまずはアジアを征服してみようかと思って。その次は世界征服を楽しむのも悪くないだろ?」

さっぱり笑って言ったけど、どこまでが本心なのか。

「組を抜けるわけじゃない。中根への義理は果たすさ」
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