愛は、つらぬく主義につき。 ~2
食事のあいだは、雰囲気がいいイタリアンのお店がどこだとか、当たり障りのないことを話しかけられては相槌を打ち。踏み込んだ話には触れない。お互い。

先に食べ終えた高津さんの口から「・・・結婚式は来月か」と独り言みたいに漏れた。

「遊佐さんには頭が下がるよ。俺だったら、脚のハンデを抱えて本家のお嬢さんと結婚する決断はできそうにないから」 

バケットを千切った手が思わず止まる。

「すべて君の為なんだろうね、自分のことよりも」

「・・・なにが言いたいんですか」

目を合わせずに平静を装って、シチューを絡めたバケットを口に運ぶ。
高津さんはキケン、ペースを乱されるな。胸の中で警告灯が回り出す。さっきまで確かに美味しく感じてたのが、ただ噛んで飲み込む作業に変わってく。

「君をたらし込んで幹部のイスに収まってるだの、笠に着てるだのって、下らないやっかみを言う連中がいるんだよ、木崎さんとの式が流れてからは特に」

溜息混じりに聞こえた言葉がスイッチをショートさせたみたいに。指先が、視線が、・・・固まった。
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