愛は、つらぬく主義につき。 ~2
音を立ててデッキに転がったのは松葉杖だった。
まるで仕掛け(トリック)が分からずに茫然としながら。

「真・・・、どうやってここ・・・?」

自分の中がまだ(バラ)けたままで。真っ先に謝んなきゃいけないコトとか言い訳とか、渦になって巻き上がってる。ようやく口から出た言葉も、手を突っ込んで取りあえず掴めたのを押し出した、・・・そんな感覚だった。

「内緒。オレをなめてんの?」

上を仰がなくたって分かる。凍てつく氷の微笑。目を伏せて小さく(かぶり)を振るだけのあたし。

「後でたっぷり聞かせてやるから。ほら・・・行くぞ」

首許から解けた手が松葉杖を拾い上げ、今度は二の腕を捕まえてイスから立たせようとするのを。

「待・・・っ」

「君が俺のものになってくれたら」

思わず言いかけたのと高津さんがそれを遮ったのは。ほぼ同時だった。

「相澤はもう、どうでもいいよ」
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