愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「相澤に手出ししない条件なら悪くないと思ったんだけどね」

悪びれのないやんわりした口調で、困ったような笑みの気配。あたしは半身振り向き、少し目を眇めて見返した。彼は続けた。

「遊佐さんにたかる害虫も一匹残らず潰してあげるよ。君がもう泣かなくて済むように」



ぐにゃり。


視界がたわむ。


冷たい手触りの鉤爪(かぎづめ)が。


心臓を鷲掴んで。


慈悲深く。




あたしの古傷(トラウマ)を抉った。
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