愛は、つらぬく主義につき。 ~2
喧嘩した時の背筋も凍る冷ややかさとも、ユキちゃんと時折見せる“仕事”の表情とも段違いで。突き刺さる眼差しに孕む底知れない威圧感に、すくんだ体が石になる。

「・・・誰がコケにされたのか分かってんの。宮子に手ェ出したらどーするって言った? 泣き落としなんか聞く気ねーよ」

怒鳴られて吐き捨てられた方がまだ。淡々と感情の消えた声が生身の人間に思えないくらい。真が羽織ってるシャツを掴んでる手が知らず震えた。

真の気持ちを振り切って自分を通したのはあたし。謝れば赦してもらえるって高をくくってた。そんな大ごとにはなんないって浅はかに決めつけてた、甘ったれてた・・・! 血が逆流しそうなほどの後悔に打ちのめされる。

だからってこのまま千也さんを見殺しにできない。絶対にできないっっ。

ただその一心で喉元から必死に声を振り絞った。

「お願いっ、真・・・! 千也さんを見せしめにすんのはやめて・・・っ。言うこと聞かなかった罰ならあたしが受ける。もうどこにも行けないように閉じ込めてもいいから、代わりに千也さんは無事に帰してあげて奥さんのところに・・・ッ」 

思い付く限りを言葉に、駆け引きも計算もそんな余裕すらない捨て身。真の視線がすっと細まって気配が変わった。
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