愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「・・・バーカ」

上から冷たく一言だけ放つと、すげなく高津さんを見やる。

「どーせ使い捨ての手駒だろ? 北原ひとり、どーなろうが知ったこっちゃないよなアンタも」

「・・・・・・・・・」

「棺桶もいらねークチ? エコで助かるねぇ」

口角を上げて冷笑する真。もう。なにを言っても聞いてもらえる気がしない。“遊佐の若”って呼ばれる男を目の当たりにして、足許から崩れ落ちそうな絶望感に追い打ちをかけられる。

助けられないかもしれない。

頭の中が真っ白になりかけた時。高津さんが不意に言った。

「“メテオ”をキミに渡す。・・・交換条件としては悪くないだろ。千也は役に立つよ、俺と長い付き合いだけあってね」

それがどういう意味を持つのか、あたしには推し量れない。真は値踏みするようにしばらく黙ったあと、「なら今回はそれで交渉成立(チャラ)だ」と表情も変えずに返した。それから。

「西沢か。北原は適当に放り出せ、メテオはウチで仕切る。・・・あー殺すなよ、まだ使える」

イヤホン越しの会話に心臓がねじ切れそうになった。でも帰れる、大事なひとの許に・・・! あたしや織江さんと同じ、信じて待ってる人の許に。

心底安心した途端、涙が零れた。・・・恐かった。それよりもっと色んな感情が絡みあって込み上げて。自分でもどうしようもなくなって、シャツを掴んだまましゃくり上げた。

「・・・泣いても赦さねーよ」

大きな溜息と一緒に真がゆっくり体ごと向き直った気配。

「分かってねーんだからオマエは」

まだ声も怒ってた。引き寄せてあたしの頭を撫でる指先だけちょっと、・・・優しかった。
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