愛は、つらぬく主義につき。 ~2
あたしの身柄は淡々とユキちゃんに引き渡され。右にウィンカーを出したセレナは真ごと、直線道路の彼方に見る間に小さくなってった。

「・・・さ、チヨちゃんはアタシの車に乗ってちょうだい」

ふたつ隣りでお尻を向けた赤のSUV車の運転席側へと回り込んだユキちゃん。助手席に収まったあたしは滑り出した車の中で、詰めてた息を緊張と一緒に深く逃した。

「ダンナさまの愛情は果てしないわねぇ。幸せが痛いほど染みるでしょ?」

ぎこちなく視線を振り向ければ、清涼系の横顔には淡い笑みが滲んでた。 

「チヨちゃんが大事すぎて赦せない気持ちが膨らんじゃうのね。時間が経てば空気も抜けて、ちょっとずつ萎んでくるわよ」

「・・・うん。簡単に赦してもらえないのは分かってる」 

「それでもあの子と会おうと思ったのはどうして?」

やんわりユキちゃんが核心を突いた。
あたしは。自分の中に散らばったピースを拾い上げ、手探るように言葉を繋げ合わせてく。

「なんとなく・・・ね。あそこで背を向けたら高津さんは、静羽さんも、持ってるモノもぜんぶ切り捨ててこの国を出てく気がしたから。・・・かな」

温度のない眸が闇しか見なくなる気がして。由里子さんを悲しませて、躊躇なく死に急ぎそうで・・・?

「晶を憐れんでるの?」

静かに訊き返された。

「それも違うかなぁ・・・」

ウィンドウの外に視線を流してポツンと呟く。
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