愛は、つらぬく主義につき。 ~2
あたしの前じゃそんな素振り、一度も見せたコトないのに。ユキちゃんには素直に晒け出せるんだろうなぁ、やっぱり。深い溜め息。

「コンプレックスなんて・・・どこにあんだろ。弱味も弱音もぜったい吐かないもんねぇ、あたしに」

「そのくらいの意地もない人間はすぐに潰される。事故に遭って真は前よりずっと強くなったよ。宮子お嬢がいてこそなんだからもっと自負していい」

男口調のときのユキちゃんは少し空気が変わる。柔らかいけど(たる)みもなくピンと張ってる、みたいな。

「真はね」と淡く微笑まれ。あたしはじっと聞き入る。

「晶がお嬢を広い世界に浚っていきそうで怖かったんだよ、自分は籠の中に閉じ込めることしか出来ないって自覚してる分。足枷は付いてても自由にどこでも羽ばたいていける晶とは、背負うものも生きざまも違うって分かってても、地上から見上げてるしかない自分が口惜しくてしょうがない。・・・脚のことを言ってるんじゃないよ」

胸の奥の弦をやんわり爪弾かれた気がした。
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