愛は、つらぬく主義につき。 ~2
さりげなく話題も変わって、それきりユキちゃんは高津さんのことに触れない。残りの宿題は自分で片付けなきゃ。・・・まずは反省文から。

そろそろ17時の開店を前に有線のBGMも流れ出す。軽快なジャズフュージョン。こんな風に静かに始まるんだ、亞莉栖って。

スマホも沈黙したまま。真からはラインさえ来ない。放り出してきた仕事もあっただろうし、今さらだけど浅かった考えを猛烈に悔やんでる。何時になったって待つし、あるだけの時間で向き合おう、臼井宮子って存在と。

真剣に決意を固めた矢先、ドアが開いた音に無意識に視線が釣られた。真かと思って心臓が一瞬跳ねた。宿題がまだ半分くらいなのに、って。

「お疲れさまです、・・・若頭(かしら)

ユキちゃんの恭しい物言いを初めて耳にした。

「済まんな藤代。次は子守りの駄賃を考えておく」

「お気遣いは無用に願えませんか。ただのお節介ですから」

「甘い顔をすると付けあがるぞ、・・・俺が」

姿を見せたダークグレーの三つ揃いに黒いシャツ、シルバーグレーのネクタイで決めてるダンディな紳士が、ニヒルに口許を緩めながらこっちに向かって歩いてくる。

目を丸くしたあたしの目の前に悠然と佇んだ哲っちゃんは。上から目を細め淡く口角を上げた。

「お迎えにあがりましたよ、宮子お嬢」
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