愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「そのときは哲っちゃんに殺されてあげる」

きっぱり言い返した。

「でも『一緒になってシアワセだった』って真を笑って逝かせるまで、脇目ふってる余裕なんか1ミリだってないから、あたし」

あんたを見送ったら、最期は笑って追いかけてくの。そう決めてんの。

高津さんへの感傷はそういうのとはまるで別モノ。言葉(カタチ)にするならなんだろう、・・・似た傷の痛みを知る者同士。みたいな。うまく言えない。

触れただけで切れそうな黒い眼光ががわずかに細まった。間近で交差する視線、逸らさずに数秒。もしかしたらもっと。

ふと空気が緩んで哲っちゃんの横顔に不敵そうな笑みが流れる。

「不甲斐ない愚息が愛想を尽かされたって言うなら、俺が引導を渡してやるつもりだったがねぇ。・・・そうまで言ってもらえりゃ、夫冥利(みょうり)に尽きるだろうよ」

「あたしの方だよ哲っちゃん。真が気にしてるの知ってて、勝手に会ったんだもん」

伏せ目がちに。反省だけならサルでもできるって、榊にこっぴどく叱られそう。

「恋女房が少しばかりあさってを向いたくらいでこの有様とは。・・・宮子お嬢にくれてやるにはまだ役不足でしたかね」

顎の下から指が離れる間際、額にキスを落として。息子には容赦なく手厳しい哲っちゃんだった。



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