愛は、つらぬく主義につき。 ~2
闇が降り始めの暮れがかり。小一時間も走ったか走らないかって頃、なだらかな制動がかかってエンジンが沈黙した。専属運転手の及川(おいかわ)さんは、まずあたしの側に回り外からドアを開けてくれる。

「お疲れ様でした、宮子お嬢」

「ありがとうございます」

黒服の彼に礼儀正しく頭を下げられたのを恐縮気味な笑顔で返す。

竹垣に囲われた駐車場から哲っちゃんに手を引かれて木戸を抜け、『花爛(からん)』て名入りの行灯が灯った数寄屋造りの玄関をくぐった。

「お連れさまもお着きでございます」

瑤子ママとは妖艶さの質が違う着物姿の女将が、上品な微笑を浮かべ板目の廊下を静々と。
角を曲がれば漆喰の壁も途切れ、ガラス戸越し、景色のいい日本庭園が仄明かりに覗いた。

それより気になったのは女将の口から出た『お連れさま』。今日の流れで思い当たるったら真・・・と仁兄? あたしの反省会のためにわざわざお座敷? ごめん、ちょっと胃が痛くなってきたよ哲っちゃん・・・・・・。
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