愛は、つらぬく主義につき。 ~2
遠隔操作でもされてるようにたぐり寄せられ、ぎこちなく脇に正座する。まともに目も合わせられず膝の上できゅっと指を握りしめて、次を待つ。・・・待つ。

拷問に近い沈黙はどれくらい続いたんだろう。真の場合じわじわと絞め殺しに来るタイプだけど、仁兄は一本ずつ斬り落としてくタイプ。ひと思いに()ってくれないのも、よく似てる・・・。

「仁。そんなにお嬢を苛めてくれるな」

見かねたのか、上座に落ち着いた哲っちゃんが苦笑雑じりの気配で。

「・・・ただの説教です。かまわんで下さい」

さらに一段階、冷ややかさの増した仁兄。
清水の舞台からダイブする心境であたしは三つ指ついて頭を下げた。

「・・・留守のあいだに心配かけちゃって、ほんとにごめんなさい・・・! 仕事も無断で放り出したし、社会人としても妹としても赦されないと思う。どうしたら仁兄の気が済むのか言って。なんでもするから、あたし・・・っ」

「お前がしたことは俺への裏切りだ。違うか?」

頭の上に注がれる厳しい言葉に胸が詰まった。

「・・・・・・そう言われても仕方ないって・・・思ってる」

せっかく仁兄の計らいで働かせてもらったのにこんな中途半端に辞めるし、何より。あたしを危険から守ろうとしてくれてる矜恃を踏みにじったのも同じ。軽くなんて考えてもなかった。

「顔を上げろ」

命令されておずおず見上げれば、眼鏡のブリッジに手をやった仁兄に凍てつく横目で睨み据えられてた。
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