愛は、つらぬく主義につき。 ~2
誰かがなにかを言ってくれるまで自分からは顔を向かせない、そんな思いで。
真には『ごめんなさい』は聞き飽きたって言われてたっけ・・・。でもケジメだから、これは。

ややあって、色んなものをいっぺんに吐き出したみたいな溜息が聞こえた。

「宮子」

澱みのない真の声。恐る恐る視線を上げてったら黒のスーツに着替え直してたアイドル顔が、前髪を掻き上げてもう一回小さく息を吐く。

「言い足りねーコトがあるだけで怒ってない。反省したのはよーく分かったし、いいから座りな」

まだ全部が解けきってないのも伝わってきてた。でも。しょーがないねオマエは。そう言いたげな眼差しは和らいで見えた。心からほっとして胸の奥がじんわり温もる。顔を見るまで胃がねじ切れそうに不安だった。・・・ほんとは。

「ならこの話は手打ちだ、仕舞いにする。・・・俺も遠慮なくお嬢を口説かせてもらおうかねぇ」

妖しく微笑んだ哲っちゃんが、腰砕けになりそうな秋波をあたしに送ってワインカップを掲げた。

「・・・ああ宮子のことだがな、週3でかまわねぇから俺のマンションに通わせろ。ハウスメイドとして雇ってやる」

仁兄までしれっとナンか言ってる。

「・・・勝手にオレの嫁を好きにすんなよ・・・」

真の3度目の溜息は心底うんざりしてて。張ってた気持ちも置き去りに、素直に吹き出したあたしだった。




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