愛は、つらぬく主義につき。 ~2
真っ直ぐ見上げたあたしからついと逸らされた視線。

「・・・他にねぇんだ、好きにさせろ」

でもなんか。なにかを押し殺して。いつもの榊と違う。思わず手を伸ばして上着の袖を掴んだ。

思い出す。あのカフェレストランの駐車場でも自分は『用無し』だって怒った。・・・“怒った”? ううんそうじゃない、傷付いてたんだ榊は・・・! 

袖を掴んでる指にぐっと力を籠め。真剣に訴えかける。

「あんたを要らないなんて、今の今まで一度だって思ったことないよ・・・っ」

逸れたままの眼差しがわずかに歪んで見えた。

「カタギのまま生きてくほうが楽だったのに、一ツ橋(ウチ)に来たいって言ったのをあたしは止めなかった。簡単にやめらんないのも知ってて嬉しいって思った、信じられる味方がこれからも傍にいてくれるんだって。・・・あれからずっと文句も言わずにあたしを守ってくれて、でも榊はそれでいいのって思っちゃうんだよ。極道になったからには貫きたい生き様だってあんでしょ」

だから。無意識に確かめる言葉がときどき口をついた。答えが素っ気なくても不機嫌そうでも安心できた。

「ほんとはあんたの人生まるごと全部ほしいの。片思いの彼女を忘れないまま他の誰も好きになんないで、あたしの為に生きてほしいって思ってんの。こんな子供じみたコト考えてるあたしは、あんたにどう言えばいいの? 命懸けてよ、なんて言えないじゃない・・・!」
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