愛は、つらぬく主義につき。 ~2
バスタブに温めのお湯を張り、髪と体を洗ってから半身()かる。あちこち突っ張ってた筋肉も(ほぐ)れてく気がして、口から長い吐息が漏れる。

視線を落とすと胸や内股に紅い痣がいくつも。首筋に点々と残ってるのも鏡に映ってた。愛と罰の刻印。いっそ埋め尽くされてもいい。分かりやすく思い知らされるほうがいい。

人の心が着ぐるみ着てるみたいにファスナー下げればスケルトン、・・・だったら楽だったのに。丸見えだったら真に刺さってる棘を残らず抜いてあげられたのに。もどかしくて切なくて、どうにかしたくて苦しい。

広いバスタブを持て余すようにひとり膝を抱えながら。鼻の奥がつんとしたのを、両手でお湯を掬い顔を流して誤魔化した。まだちゃんと話せてもないんだから、へこんでる場合じゃない。自分で自分を励ます。

途端。ガチャリと音を立てた浴室ドア。

「なんで勝手にいなくなってんの・・・オマエ」

何なら半分寝てるくらい怠そうに素っ裸で入ってきた真は、呆気に取られてるこっちを尻目にバスチェアにどっかり腰を下ろす。

洗い流されるシャンプーの泡が、背中の薔薇の上を滑り落ちてくのを無心で眺めてるうち。湯しぶきが立ってあっという間、バスタブの中でしっかり捕まえられてた。
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