愛は、つらぬく主義につき。 ~2
晦日まで大掃除や買い出しを手伝って、ママとあくせく動き回り。大晦日は実家で自分の部屋の掃除と、年越しの手伝い。遊佐や榊も事務所に詰めて新年を迎える準備に忙しそう。

台所はおばあちゃんと瑤子ママの仕切りだし、あたしは新年会のセッティングを監督してる仁兄にくっついて離れのゲストハウスにいた。

襖をぜんぶ取っ払えば50帖くらいになるお座敷に、黒塗りの座卓を上座から縦一列にずらっと並べ、座椅子を等間隔に。出来るだけ広めに空けてるのは、お酒が進むと気の大きくなる輩同士が一触即発・・・なんてコトもざらだから。
一ツ橋組クラスになると大きな集まりは警察の監視付き。ちょっとでも騒ぎを起こしたら速攻、介入される。せっかくの新年会をそんな野暮で台無しにしたくないし?

屏風や床の間の掛け軸の替え、それから活け花は、“姐さん”の大事な役目でずっとおばあちゃんが担ってきたけど。そろそろ瑤子ママに伝授されるんじゃないかなって思う。


「宮子、盆を置いてみろ」

「うん分かった」

仁兄の指示通り段ボール箱から重なった朱塗りの小ぶりな半月盆を取り出すと、上座から順に座卓の天板にひとつひとつ几帳面に並べてく。本番は明日の夕方からだからリハーサルみたいなもの。

鮮やかな黒と(あか)のコントラストが、漂う厳かな空気をぐっと引き締める感じがする。
もうあと数時間後には除夜の鐘かぁ・・・・・・。

どこか感傷的になって浸りたくなるのをそっと振り払い。あたしはキビキビと手を動かし続けた。



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