愛は、つらぬく主義につき。 ~2
夕飯くらいまで事務所に詰めてるらしい真を残し、哲っちゃんちまで数分の道のりを榊に送ってもらう。自分の家の庭だよ?って思っても、二人の威圧感がハンパなくて到底言えない。

小道を歩きながら、紗江がゴールデンウィークに会いたがってる話をさり気なくしてみた。最終決定はもちろん真。その前に榊の反応を探る作戦。

「あいつもそこまでは意固地にならねぇだろ」

素っ気なく返る。

「亞莉栖はしばらく我慢しとけ。・・・ケジメってやつだからよ」

「うん・・・。分かってる」

式の前にきちんとお礼もしたいし、ユキちゃんに会えないのはものすごく寂しい。あの笑顔だけでほっとできるんだよね・・・。タダなのによく効く魔法なの。

ちょっと萎れたあたしにぼそっと付け足された。

「・・・・・・ユキさんからの伝言だ、北原はひと月もすりゃ動けるってよ」

思わず足が止まった。前を行きかけた榊も立ち止まり黙ってこっちを向く。

高津さんと千也さんのことはあたしに教えるなって、間違いなく真から箝口令が敷かれてるハズ。・・・ああ、だから“ユキちゃんからの伝言”?

「・・・そっか・・・。よかった・・・」

心底、安堵して。鼻の奥がつんと痛む。

ずっと気掛かりだった。殺されないのは分かってても、五体満足で解放される保証なんてない。それでも祈るくらいしか出来なくて、千也さんを待ってる奥さんを思うたび心臓が千切れそうだった。

「ありがと榊。・・・真には口止めされてたでしょ」

「・・・・・・・・・」

気弱に笑んで見せると、ふいっと顔ごと逸らされた。なんだかんだ一番怒鳴られるけど、一番甘いのも榊かもしれない。

あたしにも刺さってた大きな棘が一本、抜け落ちて。千也さんが愛する家族の許に戻れる頃にはその傷も塞がりそうな気がした。



< 204 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop