愛は、つらぬく主義につき。 ~2
見慣れた扉の前に立って深呼吸をひとつ。真ちゅう製のアンティークぽい取っ手に手をかけ、いざ開く。

「いらっしゃーい」

実際には1ヶ月も経ってないけど懐かしい声、ママのウエルカム。

「ユキちゃぁぁぁん~~~っっ」

「あらぁチヨちゃん、やっとマコトちゃんのお許しが出たの?」

「取りあえずだよ、ユキ姉」

後ろから真が素っ気なく。

「カゴから出すのはまだ先」

「心配症ねぇ、ダンナさまは」

白いシャツ姿の清涼系お姉さんがクスクス笑う。

あたしは手にしたものを後ろに隠しつつ、いつもの席の前まで来るとカウンターのこっち側からしおらしくユキちゃんを見上げた。

「ユキちゃん。このあいだのお礼、遅くなってごめんね。今日は気持ちだけなんだけど!」

言いながら慎重に腕を前に回し、けっこうなボリュームになったそれの陰から自分の顔を覗かせて、ユキちゃんに差し出す。

「・・・やだ。紅いバラの花束なんてもらったの、いつくらいぶりかしら」

驚いたように目を見張ったあと。やんわり笑みを崩したユキちゃん。

「ありがとう、宮子お嬢。今までで一番の贈り物かな」

男口調で返されて、ドキッとしちゃったのは真には内緒にしとこ?
< 209 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop