愛は、つらぬく主義につき。 ~2
2度目でどうかなって思ったら、哲っちゃんも仁兄もあたしのドレス姿に満足そうな顔してくれたし、お父さんの眼も心なしか潤んで見えた。もちろん、おじいちゃんの孫娘愛は相変わらずの青天井で。

薄いピンクの薔薇やグリーンを合わせたクラッチブーケを手に、椅子に腰掛けた真の脇にあたしが寄り添って立つツーショット写真と、臼井家アンド遊佐家プラス榊の全員で家族写真を撮り終わると。染みるように実感がわいてきてた、いよいよ式なんだなぁって。

それからみんなで控え室にぞろぞろと向かえば、イタリアンマフィア風な白いスーツ姿のシノブさんと、くすんだオレンジ色のスレンダーな膝丈ドレスがとってもエレガントな由里子さんが一番乗りだった。

「やぁん、宮子ちゃんすっごく素敵~っっ。やだ真クン、噂どおりの美男子~っ。お兄に言ってもっと早く会わせてもらえばよかったぁ!」

「オイオイ、落ち着け由里。逃げやしねぇだろうが」

いきなりテンションマックスの彼女に芝居がかって肩を竦めてから、シノブさんが気障に手を取りあたしの甲に口付ける。

「本番はやっぱり見違えるなミヤコ。めでたい席だ、野暮は言わずに愉しませてもらうぜ」

「ありがとうございます、シノブさん」

“野暮”がどれを指してるのかはあたしも敢えて流し、満面の笑顔で返す。

真にもシノブさんらしい言葉をくれると、由里子さんを連れてお父さん達に挨拶に行き、少しして紗江が家族3人で到着した。

ちょっと気が弱そうだけど優しいダンナさんとは結婚式以来、愛息子の陽斗(はると)くんは赤ちゃんの頃に会ったきり。子供用のフォーマルスーツでおめかしして元気に挨拶してくれたのを、こんなに大きくなったのかと抱き締めて頬ずりしたくなった。

紺色のシックなフォーマルワンピースにアイボリーのボレロを羽織り、髪をアップにした紗江は、椅子に座ってるあたしと真を交互に見つめると。堪えきれなくなったように顔を歪ませ、ぽろぽろ涙を零して声を詰まらせた。

「・・・あたしがっ、どれだけこの日を待ってたか、分かる・・・っ?」

うん、あたしだって。
どれだけこの日を夢見てきたか。

「二人ともよく頑張ったねっ、よく諦めなかったね・・・っっ」

自分だけじゃ無理だったよ、紗江や榊、支えてくれた家族みんなのおかげだよ?

「宮子がどれだけ遊佐クンを好きで、遊佐クンが宮子を一番愛してるのは知ってる・・! あたしがどうこう言わなくたって、二人が幸せなのも知ってる。だからもうあとは、ハチミツ色の人生だけ送りなさいよっ・・・? 見てるこっちが胸焼けしそうな甘甘のバカ夫婦になっちゃいなさい! いい?」

鼻をすすり上げ、あたし達の背中を見えない手でバンバン叩いてくれる親友。

「これから宮子達がどんな道を選んでも、世間がなんて言っても、あたしは3人の味方で、切っても切れないんだからね? あたしだけ仲間はずれにしたら許さないからねっ?」

紗江はそう言って、片方ずつあたしと真の手を取りギュッと握りしめた。
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