愛は、つらぬく主義につき。 ~2
8-3
現代風のチャペルに近付くにつれ、待ち遠しくてワクワクするような、ようやくここまで来たって感慨が溢れてくるような。
普通の新郎新婦はどうか分かんないけど、あたしと真にとっては命を預けあう神聖な儀式で。覚悟を近しい人達に見届けてもらうための特別な日。
晴れやかで。でも、きゅっと引き締まる。そんな感じ。
ワインレッドの絨毯の上をゆっくり車椅子を後押ししながら、閉じた扉の前まで来たとき。真が顔だけ後ろを振り返ってあたしの名前を呼んだ。
「どうしたの?」
「オレ、杖ついてもいい?」
「えっ・・・?」
脳みそが意味を理解するまで時間がかかった。リハーサルでもなんにも言わなかったのに、いきなりで目を丸くしたまま絶句する。
段取りが頭から全部飛びそうになって思考回路が右往左往してる間に、観音扉の左側にスタンバってたスタッフさんが近寄ってくると、愛用の松葉杖を控えめに真に差し出す。
「バージンロードはオマエと歩きたいから」
悪戯っぽく笑い、重心をかけて体を傾かせながら立ち上がった真。グローブの代わりに右手に杖、左肘を曲げて見せ、黙ってエスコートされろ、の仕草。
どうやらあたしに内緒で画策してたらしく、プランナーさんまで『してやったり』な笑顔。
・・・なによもう。どうして分かっちゃったのよ。ほんとはそう言ってくれるのを頭の隅っこで小さく願ってたコト。
車椅子で式に臨もうって決めたのは。いつかそれが日常になっても、何ひとつ折れるモノも、曲がるモノもないのを堂々と伝えたかった。裏腹に。自分の脚でちゃんと踏ん張れてる真を目に焼きつけて欲しいとも思った、誇りたかった。あたしの夫は負けたりしないって。
「・・・ばかぁ、泣かせないでよぉ・・・」
涙声になって、真の左腕に右手を通す。
「泣かせるためにやってんの」
涼しそうに笑った気配。
プランナーさんの合図で左右の扉が同時に手前に引かれた。エレクトーンが結婚行進曲を奏で始め、一歩一歩、真の歩調に合わせて深紅のバージンロードを踏みしめる。
普通の新郎新婦はどうか分かんないけど、あたしと真にとっては命を預けあう神聖な儀式で。覚悟を近しい人達に見届けてもらうための特別な日。
晴れやかで。でも、きゅっと引き締まる。そんな感じ。
ワインレッドの絨毯の上をゆっくり車椅子を後押ししながら、閉じた扉の前まで来たとき。真が顔だけ後ろを振り返ってあたしの名前を呼んだ。
「どうしたの?」
「オレ、杖ついてもいい?」
「えっ・・・?」
脳みそが意味を理解するまで時間がかかった。リハーサルでもなんにも言わなかったのに、いきなりで目を丸くしたまま絶句する。
段取りが頭から全部飛びそうになって思考回路が右往左往してる間に、観音扉の左側にスタンバってたスタッフさんが近寄ってくると、愛用の松葉杖を控えめに真に差し出す。
「バージンロードはオマエと歩きたいから」
悪戯っぽく笑い、重心をかけて体を傾かせながら立ち上がった真。グローブの代わりに右手に杖、左肘を曲げて見せ、黙ってエスコートされろ、の仕草。
どうやらあたしに内緒で画策してたらしく、プランナーさんまで『してやったり』な笑顔。
・・・なによもう。どうして分かっちゃったのよ。ほんとはそう言ってくれるのを頭の隅っこで小さく願ってたコト。
車椅子で式に臨もうって決めたのは。いつかそれが日常になっても、何ひとつ折れるモノも、曲がるモノもないのを堂々と伝えたかった。裏腹に。自分の脚でちゃんと踏ん張れてる真を目に焼きつけて欲しいとも思った、誇りたかった。あたしの夫は負けたりしないって。
「・・・ばかぁ、泣かせないでよぉ・・・」
涙声になって、真の左腕に右手を通す。
「泣かせるためにやってんの」
涼しそうに笑った気配。
プランナーさんの合図で左右の扉が同時に手前に引かれた。エレクトーンが結婚行進曲を奏で始め、一歩一歩、真の歩調に合わせて深紅のバージンロードを踏みしめる。