愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「呼びたいなら、紗江もオレをマコトって呼んでいーよ?」

「それはなんかイヤ!」

「うわ、全力で拒否られた」

真があたしの肩に泣きついたのを、笑ってヨシヨシしてあげる。

組の関係者には実家での披露宴で公表するコトだけど。あたしが臼井家の跡目である以上、遊佐の姓にはなれないから真が臼井の籍に入るのは最初から決まってた。そして仁兄が、瑤子ママの旧姓の木崎姓から遊佐姓に戻る。遊佐(ゆさ)(じん)になる。

臼井も遊佐もこれで足許が踏み固まって、しかも切っても切れない縁で繋がったんだから。二の組をシノブさん、三の組を相澤さんがまとめてってくれれば一ツ橋の結束はいずれ最強になると思う。でも反面、それを煙たがる(やから)が必ず動くハズで。・・・あたし達の結婚がめでたいだけで済まないのは少しは分かってるつもり。

一緒にいるときにそんな話は微塵も出てこなくても、高津さんが言ったとおりなら想像くらいつく。・・・今更ながらあれは忠告代わりだったんじゃないかって、そんな風に思うあたしはずい分とお人好しなのかもしれない。

「榊クンもあたしを青木って呼ぶし、遊佐クンは遊佐クンで、もういいわよねぇ?」

あっさりした親友の一言でふと湧いた疑問。

「ねぇそう言えば、榊ってあたしをなんて呼ぶっけ?? 学校行ってたときは臼井って呼んでたよね?」

「・・・・・・うるせぇよ」

端に座った真の脇に突っ立ったままの用心棒が、仏頂面でぼそっと。

「呼びたいなら榊もあたしを宮子って呼んでもいいよ?」

真を真似たら鬼の形相に変わって睨まれた。

「なんだかんだ言っても宮子と榊クンて良いコンビっていうか」

クスクス笑いの紗江。

「これからも宮子をお願いね。ついでに、女グセの悪かった元ホストのダンナも!」

「・・・ああ。心配するな」

真っ直ぐにこっちを見下ろす榊と目が合った。
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