愛は、つらぬく主義につき。 ~2
巡回中の警備係が二人ひと組で庭を横切っていくのを目で追いながら、しばらくして扉が開閉する物音、人の動く気配に踵を返した。

洗面所から出てきたあいつは「待たせてごめん」と着物の裾を気にしながら笑ったが、今朝より冴えない顔色に見える。

「・・・お前、疲れてるんじゃねぇのか」

「んー? 着物がひさびさだからかなぁ、ちょっと苦しいってカンジだけどね」

帯の上をさするような仕草で歩き出したのを、後ろから。

「真に言ってやるから自分の部屋で少し休んでろ」

「大丈夫だってば。主役がいなくてどーすんの?」

言うだろうと思ったことをやっぱり言いやがった。

具合が悪いってほどでもねぇのは見てわかる。どうせ聞きやしないだろう。内心で溜息を漏らし、わざと低く脅しを効かせてやる。

「・・・無理しやがったら強制送還だからな」

「ハイハイ。なんだろねー、そんなに食べてないのにお腹が張ってるっていうか、せ・・・」

そこまで言ったこいつに急に立ち止まられ、ぶつかるまいと思わずつんのめりそうになった。

「危ねぇだろうが!」

「・・・・・・あれ?、そう言えばいつ来たっけ? えーっとぉ・・・」

全く俺にはかまわず何やら考え込んでたかと思うと、今度はいきなり振り向き、口を開きかけたのを閉じる。・・・なんだ、その挙動不審は。眉を顰めて上から睨む。すると臼井は照れの混じった上目遣いで小さく笑った。

「もしかして赤ちゃんできてたりするかなぁって!」
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