愛は、つらぬく主義につき。 ~2
披露宴は建前で、どいつも取り入りと顔繋ぎに来てるようなもんだが、二時間そこそこで引き上げてく連中も出始める。埋め尽くされて見えた広間もだいぶ、風通しがよくなった。

「ねぇ大丈夫、真。奥で休めば?」

「ヘーキだよ」

酒はそれなりに強いが臼井の分も杯を受けてりゃ、いい加減きてるだろう。前回の婚約披露とは違いさすがに場を長く外せないのは承知で、真はペットボトルの水を受け取りながら気丈に笑う。それをあいつは心配そうに見守っていた。

「オレちょっとトイレ行くから西沢呼んで-」

視線を送られ無線で呼び出すと、数分と経たずに丸縁のサングラスをかけた西沢が姿を見せた。慣れた様子でイスから立ち上がるのを手助けしてやり、松葉杖をつく真に付き添って出て行く。最初は少し足許がふらついたが、足取りはしっかりしていた。残った臼井は見送りながら安堵したように息を吐く。

「あたしがもっと飲めたら、真にムリさせないんだけど」

「・・・酒の強い女なんか可愛くねぇだろ」

ぼそっと言えば、脇に立つ俺を見上げた目を丸くしてから、宝物でも探し当てたみたいな嬉しそうな顔をしやがる。

「榊がそういうコト言うの珍しいね? いっつも『うるせぇ』って、好みのタイプとか好きな人の話は全然してくんないんだもん」

・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・そんなに聞きたかったのかよ」

苦虫を噛みつぶした顔で言ってやった。

「だって真とはするでしょ、そういう話。あたしだけのけ者なんてズルい!」

「しねぇよ」

「そうなの?!」

・・・・・・したことねぇよ。わざとらしく目を逸らした。

アイツはずっと前から気付いてる。知ってて俺をお前の傍に置いてる。絶対的な信頼で。・・・俺が裏切らねぇと信じて。
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