愛は、つらぬく主義につき。 ~2
俺と真の間にある唯一、不可侵な領域だ。越えれば終わる。

「・・・大した話じゃねぇからな」

素っ気なく言い放った俺に、臼井は残念そうな溜息を漏らした。

「榊は秘密主義すぎるー」

「・・・うるせぇな」

こんな些細なやり取りで十分だった。こいつの中に俺が根付いて、切り離せねぇならそれでいい。何も知らなくていい、・・・お前はそれで。


少し気が逸れたのを、背筋を張り直して全体に視線を巡らせる。

中央に大皿料理と酒の乗ったテーブルが縦長に、足休めのイスは壁や敷居伝いに並べてあった。たいがいが馴染み同士で固まり腰を落ち着けている。仁さんと志信兄貴、相澤代理がつるんでる姿もあった。

入り口付近は帰り客がまばらにあり、腕章を付けた迎えが出入りしている。前のほうにゆっくり歩いてくる若い()は、誰かを探す様子でスーツに腕章はない。組下の招待客か、と頭の隅で思った。

見慣れない顔も当然ある。だが各組長承認で申請された名入りの招待状がない限り、通さない。受付での照会も厳重だ。騒ぎを起こせば、身元を保証したトップが詰められる仕組みだった。
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