愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「藤ッ、そいつは吐かせるまで殺すなッ!」

相澤代理の怒声に途切れかけの意識が繋がる。
耳障りな騒音、怒号、・・・・・・・・・うるせぇ・・・。

「松田医師(せんせい)に電話して車回せッッ。・・・宮子ッ、無事かッ、宮子!!」

上から仁さんの怒鳴り声が降ってくる。

「・・・じん、にぃ・・・」

鉄の塊になったみてぇに動けないテメェの下から、弱くあいつの声が聞こえた。

・・・・・・ああ、生きてやがった・・・。

心底安堵した。早くどいてやらねぇと。頭じゃ分かってるってのに体が全く言うことを聞きやがらない。

「榊!! しっかりしろッ、こんなところで死ぬんじゃねぇぞ!!」

仁さんが聞いたこともねぇ大声でがなってる。

死なねぇよ俺は。こいつより先には逝けねぇんだ。そう約束したんだ、仁さん。

起き上がれもしない木偶(でく)の体が揺らされて重く浮く。その瞬間、背中と腰の辺りを激痛が襲い、喉から空気と呻きを吐き出す。息が上がって口の中に鉄サビみてぇな味が広がった。

「榊・・・っ、榊ぃっっ・・・」

・・・・・・あいつが呼んでる。あれだけ泣いたのに、まだ泣くのかよ・・・。お前の涙栓ぶっ壊れてんじゃねぇのか・・・?

呆れて俺は素直に笑ってやった。もっと笑ってやりゃ良かった。ふとそんな気になった。

瞼の裏で臼井が笑い返す。

“あたしを睨んでる榊のほうが榊らしいってば”

・・・そうかよ。どんな俺でもいいから憶えとけよ。声にならねぇ声で呟いた。
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