愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「明けましておめでとうございます。織江さんにも本当にお世話になりっぱなしで、今年もたぶんそうなる予定なんですけど、よろしくお願いいたします」

日本語がなんとなく変だった気もするけど、正座で畳に三つ指をつき丁寧にお辞儀する。

「顔を上げていただけませんか」

低く透る声が柔らかに降って、しずしずと顔を上げれば。
居ずまいを正してこっちを向いた相澤さんが、淡く笑みを浮かべてた。

「宮子お嬢さんと親しくさせていただいてから、織江なりに思うところがあったようで。おこがましいのは承知していますが、これからも織江をお頼みいたします」

黒の三つ揃いにダークグレーのシャツ、パールシルバーのネクタイ。髪は少し後ろに流し気味。極道にはもったいないくらい、超絶イケメン紳士な相澤さん。
見とれるあまり、はるか彼方に飛んでた意識をどうにか引っ張り戻す。

「いえ、あのこちらこそ、お姉さんができて嬉しいですから・・・っ。末永くお付き合いさせてください」

もちろん相澤さん込みで!
・・・なんて言えないから、取りあえずココロの中でだけ。
顔が火照って、どぎまぎしてるのを必死に隠しながら。
もっと相澤さんと話してたいし、これ以上は心臓が持ちそうにないし。
次に移ろうか、天使と悪魔の誘惑を戦わせてると。

「よう。俺も仲間に混ぜろや」

遠慮のない足音が後ろから近付いてきたと思いきや、白くてがっしりした塊があたしの隣りにどっかり胡坐をかいた。
ぎょっとして横を仰げば。白の三つ揃いに赤紫のシャツ、黒のネクタイっていうイタリアンマフィアみたいな風貌の、相澤さんよりちょっと歳が上・・・な男。

「その着物よく似あってるぜ、ミヤコ」

南国っぽいワイルドな顔立ちで、気障に片目瞑って見せたりとか。
性格がイタリア人かな、このヒトの場合。

「シノブさんこそ、相変わらず目立ってますよ?」

「男は目立ってナンボだろうが」

上着の内ポケットから外国産のボックス煙草を手に、一本を遠慮なく口に咥えたところで相澤さんが卒なくライターを差し出す。

大胆不敵な貫禄が漂う、シノブさんこと中根(なかね)志信(しのぶ)さんは。
二の組、組長の息子で若頭。つまり哲っちゃんと同じに次期組長。一ツ橋の屋台骨のひとりだ。
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