愛は、つらぬく主義につき。 ~2
中根の家は古くからの元締め稼業で。ひいひいおじいちゃんの頃、臼井が地代の取り立てや用心棒なんかを任せたのが付き合いの始まりだそう。
一ツ橋組を(おこ)したひいおじいちゃんは中根の身内をお嫁にもらって、おじいちゃんの代で二の組を仕切らせた。本家は親戚筋の中根ビイキだから、シノブさんがときどき独走するのを黙認して大きいカオさせてる・・・なんて言われ方もしてるらしいけど。

お父さんや哲っちゃんが何も言わないのは、きっとシノブさんを買ってるからで、甘やかしてるワケじゃない。(しがらみ)に囚われないで、どんどん道を拓いてける果敢(つよ)さに期待してるんじゃないかって。あたしは思うよ。


白く長い息を口許から逃し、シノブさんがニンマリ口角を上げてみせた。

「そういや、こないだの結婚式は楽しませてくれたよなぁ。ジンもミヤコには甘いと見える」

「激甘って言っていいですよ?」

視線を傾げて、あたしも悪戯っぽく。

「今度はちゃんと、遊佐との式に()びますから」

「あんな派手なリハーサルに呼べって誰が言ったよ、ったく。祝儀がバカになんねぇだろ、なぁ(わたる)

相変わらずの歯に衣着せない物言いに、相澤さんは仄かな苦笑い。

「ま、ミヤコがマコト背負(しょ)って生きてくってんなら、俺は止めやしねぇよ。今は、脚がねぇより脳ミソねぇ方がよっぽど使えねぇ時代だ。せいぜい気張れや」

グローブみたいな手であたしの頭をぽんぽん撫でると、波立ったオールバックも決まってるシノブさんが腰を浮かせて立ち上がった。こっちを見下ろしながら、ふと思い出したように。

「あとでお前にも、ウチの若いのを紹介しとくか。俺の補佐(てつだい)させてんだが、まぁ顔ツナギにな」

口角を上げて、そう付け加えた時。

一瞬。相澤さんの気配が変わった。気がした。
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