愛は、つらぬく主義につき。 ~2
シノブさんの背中を見送ってから。気になって、そっとうかがった横顔。
(さと)く気付いた相澤さんは、どこか冷え冷えとして見えた眼差しを細めて、あたしをじっと見据えた。

「宮子お嬢さん」

「・・・はい」

心臓が小さく音を立て、喉から出遅れた返事。
変わらない声音だったのに。“一ツ橋の虎徹(こてつ)”って呼ばれる人の真髄を垣間見たような。

「今日は藤代(ふじしろ)を連れてきてますので。後ほど挨拶させていただきます」

「エッ・・・あ、藤さん、ですか?」

構えてたのに、外されたような。
いきなり出てきた名前に戸惑いつつ。躊躇いがちに笑み返す。

「珍しいですね・・・っ。こういうのは顔出さないって言ってたので」

「ええ・・・まあ」

相澤さんにしては曖昧だって気もした。
少し間を置き、淡く口の端を緩める。

「織江も娘たちも、宮子お嬢さんに会いたがっていました。また近いうちに寄っていただけませんか」

もちろんです、って明るく答えれば、相澤さんはやんわりと目礼で返してくれた。
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