愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「・・・宮子」
ニットパーカーの袖口をやんわり掴まれて、はっとした。
遊佐と目が合い、力なくソファにまた沈み込むと。抱き寄せられて、優しく指があたしの髪を撫でる。
「そう思ってるのはオマエだけじゃないって。どうしようもねーコトは・・・、誰にでもあんだろ」
まるで。自分に言い聞かせるように。静かな声音で遊佐が言う。
「・・・俺も聞いた話だが。事故が起きた時、相澤さんはシンガポールだった。取引が終わるまでは動けなかったんだろう。結局、誰にも看取られずに亡くなったらしいがな・・・」
後を引き取って、仁兄がおもむろに話しはじめた。
当時、高津さんは大学生で海外留学中だった。親とは疎遠で、姉が唯一の肉親。極道者の相澤さんと結婚したことも、高津さんは受け容れてた。
お姉さんが亡くなったのを知らされ、帰国して彼が耳にしたのは。彼女がひとり寂しく息を引き取った事実。姉の最愛の夫は、病院からの危篤の連絡にも『行けない』とにべもなかった。・・・そう聞かされた高津さんは、相澤さんへの憎しみを募らせて自分から極道に沈んだ。
「志信兄貴の妹と相澤さん、高津の姉は同窓でな。・・・高津を二の組に誘ったのは兄貴の妹のユリさんだったって話だ。その辺の事情は知らねぇが、兄貴は承知のうえで高津を預かってる。馬鹿はさせねぇだろうし、宮子が余計な心配することもねぇよ」
慰めるように仁兄はそう言って、淡く口角を上げた。
ニットパーカーの袖口をやんわり掴まれて、はっとした。
遊佐と目が合い、力なくソファにまた沈み込むと。抱き寄せられて、優しく指があたしの髪を撫でる。
「そう思ってるのはオマエだけじゃないって。どうしようもねーコトは・・・、誰にでもあんだろ」
まるで。自分に言い聞かせるように。静かな声音で遊佐が言う。
「・・・俺も聞いた話だが。事故が起きた時、相澤さんはシンガポールだった。取引が終わるまでは動けなかったんだろう。結局、誰にも看取られずに亡くなったらしいがな・・・」
後を引き取って、仁兄がおもむろに話しはじめた。
当時、高津さんは大学生で海外留学中だった。親とは疎遠で、姉が唯一の肉親。極道者の相澤さんと結婚したことも、高津さんは受け容れてた。
お姉さんが亡くなったのを知らされ、帰国して彼が耳にしたのは。彼女がひとり寂しく息を引き取った事実。姉の最愛の夫は、病院からの危篤の連絡にも『行けない』とにべもなかった。・・・そう聞かされた高津さんは、相澤さんへの憎しみを募らせて自分から極道に沈んだ。
「志信兄貴の妹と相澤さん、高津の姉は同窓でな。・・・高津を二の組に誘ったのは兄貴の妹のユリさんだったって話だ。その辺の事情は知らねぇが、兄貴は承知のうえで高津を預かってる。馬鹿はさせねぇだろうし、宮子が余計な心配することもねぇよ」
慰めるように仁兄はそう言って、淡く口角を上げた。