愛は、つらぬく主義につき。 ~2
なんだか。
胸が千切れそうに痛かった。

事故の連絡(しらせ)を聞いた時。相澤さんはどんな思いで『行けない』って言葉を口にしたんだろう。

本当はすぐにでも、ぜんぶ放り投げて奥さんの許に帰りたかったに決まってる。
死ぬな、って。手を握って、名前を呼んで。
最期の最期までそばにいてあげたかったに決まってる。

いちばん苦しかったのは、相澤さんだったんじゃないの?
いちばん恨みたかったのは、相澤さんなんじゃないの?


もしかしたら分かってても。
すべてを赦せないくらい。
高津さんにとっても、お姉さんはかけがえのない人だった。

誰が悪いとか間違ってたとか。
きっとそんなことじゃない。

わかり合えるとか、合えないとか。そういう次元でもない。

一生。たぶん一生。(ひず)んで(ねじ)れたその傷は。
相澤さんと高津さんの胸で血を流し続ける。・・・宿命みたいに。




そう思ったら。涙がこみ上げた。
どうして。
世の中って、どうにもならないことばっかり。

どんなに恨んだってお姉さんは帰ってこない。
最愛の人は帰ってこない。

遊佐の脚も元には戻らない。



高津さん。あなたは。こんな理不尽をいちばん赦せないんじゃないんですか。
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