愛は、つらぬく主義につき。 ~2
ちょうど二人連れのお客さんが入ってきて、いつものママの笑顔に早変わり。
今日はすぐ帰るつもりだったから、切りよく「また来るね」と亞莉栖を後にした。

近くのコインパーキングに停めてあった愛車のエンジンをかけ、スマホをチェック。
真はだいたい帰ってくる30分前に電話かラインで報せてくれる。まだ7時前。今日は何時くらいかな。ヘッドライトを点灯させ、路上へと滑り出た。

今日の夕飯はお鍋にする予定で、具材はたっぷり買い込んである。
真を送ってもらったついでに、榊と三人でテーブルを囲むのも当たり前になってて。
事務所でお弁当屋さんのお弁当か、自分のアパートに帰ったってどうせコンビニ弁当なんだろうから、有無を言わせずウチで食べさせるようにしてる。

あれかな、榊は結婚願望もナイのかなー。まあ根が真面目だからね、お世辞にも安定性のある職業とは言えないし、養ってく自信が持てないとか?

そうそう、紗江が別れ際に言ってた『応援しないけど、ガンバレ』ってヤツも、結局なんだったのか教えてくんないし、榊ってば。 

独りでブツブツ言いながらハンドル握ってる内に、マンションの駐車場に到着。
よし。今日こそ榊の腹を割らせようっ。使命感に燃えながら、車を降りてエントランスに向かう。



頭の隅っこで。

高津さんには・・・誰もいないんだろうか。
お鍋を一緒に食べたり、温もりを別け合えたりできる人や。優しい生き方を教えてくれる人は。

切なく過ぎったのを、小さく振り払い。エレベーターに乗り込んだ。




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