愛は、つらぬく主義につき。 ~2
締めは溶き卵入りの雑炊。食後のデザートに、真がおばあちゃんから持たされて帰った富有柿をむく。その間に使った食器を黙々と食器洗い機に突っ込んでく榊。

「ねぇ榊」

「なんだ」

まな板の上でむいた柿を切り分けながら。思い立っていきなり直球を投げ込んでみる。

「こないだ紗江が言ってじゃないあんたに、意地がどうのって。あれってもしかして片思いでずっと好きな人がいるとか、そういうの?」

「・・・・・・・・・」

間の空き方が、なんかいつもと違った。
思わずあたしの手も止まり探るように横を見上げる。シンクを挟んで食洗機の前にそそり立つ男と目が合って。向こうが先に、ついと顔を背けた。

「・・・・・・だったらなんだよ」

ええええぇぇー、あっさり認めたーっっ?!

水面に浮かんできた鯉みたいに口をパクパクさせて、絶句するあたし。
今までなんど訊いたって『うるせー』だの『知らねー』だの、まともに返事したことなかったのにーっ。

「ウソ・・・?! 知ってる人?!」 

「・・・さあな」

「なによぉ、教えてくれたっていーじゃない~」

「・・・・・・一生言わねぇよバーカ」

上目遣いに拗ねてみたけど。ぶっきらぼうに返っただけ。

バカってなによー。口も尖らせて睨みを利かせる。・・・スルーされた。
ちょっと目付きの悪い阿部寛はガンコだから、絶対クチは割らないなぁ。小さく溜息を吐く。分かった、誰かは訊かないわよ。

「その人のことがずっと好きでカノジョ作らないの?」

好奇心で言ってるワケじゃないからね? あたしは真面目な顔で。
榊も察したのか、こっちに傾けた眼差しはピンと張った糸みたいに真っ直ぐだった。
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