愛は、つらぬく主義につき。 ~2
「・・・俺が勝手に()くせねぇだけだ。お前には関係ねぇし好きにさせろ」

低くきっぱりと。
そのひと言に。榊の一途な気持ちの全部が込められてる気がした。

正直、今までそんな人がいたことも気が付かなかった自分にショックだった。榊のことは真の次くらい知ったつもりでいたのに、修行が足らなかったなぁ。もう水くさいったら。紗江には教えたクセに。

でもそっかぁ、叶わない片思いかぁ・・・。身につまされて胸がきゅうっと鳴く。
ほんとは叶う方が奇跡に近いのかもしれないね。
この手に掴んじゃうと当たり前になってくけど。
叶ったあたしは、もっともっと大切にしなくちゃ。

榊にもいつか。想像もつかないトコから奇跡が降ってくるよ。
愛想も愛嬌もなくて可愛げもないけど。
あんたは魔法の手を持ってるから。
きっとね、知らないうちに掌で掬いあげてるって思う。
あたしと真がそうしてもらえたみたいに。

それまで見届ける、あんたの恋をずっと。その役目はだれにも譲らないで。


あたしは小さく笑みをほころばせた。

「あんたが決めてるコトなら口出ししない。彼女作れなんてもう言わないし骨は拾ってあげるから、とことん好きでいいんじゃないの?」

榊は少し目を見張ってから。ぼそっと呟く。

「ああ。・・・そうする」


食洗機のスイッチを入れて、あたしの脇をすり抜けてった横顔が一瞬。なんだか不敵そうに見えたのは気のせい。・・・だったかな?





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