愛は、つらぬく主義につき。 ~2
ふわっふわだけど黒蜜でしっとりしたカステラと、甘さを抑えた粒あんのコラボが絶妙な由里子さんのお土産のどら焼きと。爽やかな色をした抹茶入りの煎茶を前に、オトナ女子のティータイムが始まった。

「じゃあ由里子さんと宮子さんは親戚ってこと?」

織江さんが目を丸くして驚くと、由里子さんはチャーミングに片目を瞑って見せる。

「ちょっと遠いけどそうなのよねぇ。でもほら、(いえ)は志信クンが継ぐって決まってたし、あたしは臼井の本家に行ったことないの。女の子が生まれたとか志信クンが遊んであげたとか、話はずっと聞いてたのよ?」

「あたしもシノブさんから教えてもらった記憶ありますよ? 『妹は俺に似て美人でイイ女』だって」

「俺に似て、って言っちゃうとこが残念なのよ、お(にぃ)は」

がっくり肩を落とす彼女に思わずあたしも吹き出して。

由里子さんは歳上ぶったりしたところもないし気さくだし。笑顔も会話も作ってるカンジが微塵もしない人だった。織江さんが慕ってるのも頷ける人。
なんかこう懐きたくなる雰囲気が誰かに似てる気がして。思い浮かんだのはユキちゃんだった。

「人の(えにし)ってほんとうに不思議よね。・・・織江ちゃんがセルドォルに来てくれて、相澤君と出会って。それが宮子ちゃんとも繋がってるんだもん」

コクリとお茶を一口。萩焼の湯飲み茶碗を両手で包み込み、視線を落とした由里子さんがしみじみと言う。



まるで蜘蛛の巣みたい。真ん中から網目が放射状に広がってくように。何かがどこかで繋がってる。雅ちゃんが『ゆりちゃん』の名前を出した時。それが仁兄が言ってた『志信兄貴の妹のユリ』さんだって思いもしなかった。

今日の出会いも別の道筋を辿ってまた繋がってく。シノブさんに、相澤さんに、高津さんに。望むと望まざるとに関わりなく。・・・そういうセカイ、ここは。
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