愛は、つらぬく主義につき。 ~2
織江さんが由里子さんのお店『セルドォル』で働いてた時の思い出話や、ほんのちょっとだけ相澤さんのこぼれ話を聞かせてもらったり。三人とも極道の身内っていう芯の部分を外した、楽しいお喋りで盛り上がる。

しばらく経って、お昼寝から起きてきた雅ちゃんが由里子さんを見つけて大はしゃぎ。寝起きはちょっと愚図っちゃう椿ちゃんの様子を見に、織江さんが席を立つ。

「手ェ洗ってきな」

子供用に切り分けたどら焼きと飲み物入りのカップを運んできた藤さんに付き添われ、雅ちゃんは洗面室の方へトコトコ歩ってく。

「やっぱり女の子はカワイイわよねーっ。ほんと今から心配になっちゃう。相澤君のことだから一生お嫁に出さないんじゃないかって!」

由里子さんが後ろ姿を見送りながら可笑しそうに。

真もそうなるかなぁ。ああでも娘の彼氏には容赦なさそーな気はする。息子だったら悪いコトいっぱい教えてそーな。うーん。なにしろ、昔はどこぞの帝王って呼ばれた哲っちゃんの遺伝子だもんねぇ。

つい妄想してたら「そう言えば宮子ちゃん」とこっちに振られて、一人がけソファに座ってる由里子さんに慌てて視線を戻した。

「高雄から聞いたわ、晶に会ったって」

アキラ。
あたしは一瞬、息を呑んだ。
伝わってきた高津さんとの距離感が思ったとおり近かったこと。

さっきまでの屈託ない明るさが消え、どこかぎこちない笑みを微かに口許に乗せた彼女が。紡ぐ言葉のその先を待って、唇をきゅっと小さく引き結んだ。
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