愛は、つらぬく主義につき。 ~2
大寒を過ぎて日に日に寒さが身に染みてくる。

『バレンタイン』の文字もあちこちに踊り出し、会社の男性社員に義理チョコを渡した方がいいのかどうかが目下の悩みドコロ。挨拶してもいまだに緊張されてるし、もうちょっと打ち解けてもらうキッカケにならないかって思ってるんだけど。
仁兄に相談しても『俺以外の男にくれてやる義理があるのか』とか言われるのがオチって気もしない?

一週間ぶりの亞莉栖に顔を出して、ユキちゃんにそんな愚痴も零す。

今日は真と榊も合流するって言うから、仕事のあとマンションに戻ってからタクシーで出直してきた。
一人の時は自分の車かタクシーを呼ぶのが絶対命令。しょうがないとは言え、電車もバスもICカードの使い方すらよく分からないアナログ人間で、大丈夫かなあたし・・・。


「でもクリスマスもバレンタインも誕生日も一度も欠かさないって、案外できそうで出来ないって思うわよ?」

カウンターの向こうからユキちゃんが感心気に言う。

「その点チヨちゃんとマコトちゃんて、結婚して何十年経っても新婚さんでいられそうよねぇ。倦怠期なんてないんじゃない?」

「そだねー倦怠期なんて考えたコトないかも。主導権はだいたい真が握ってるし、あたしが上手く転がされてるカンジ?」

「アラ、わりと亭主関白」

悪戯っぽくウインクが返って思い出した。

「こないだもさ、あたしが護身術でも習ったほうがよくない?って話したの。やっぱりちょっとでも自分の身くらい守りたいし」

「マコトちゃん、なんて?」

「頼りにされないくらいなら死ぬって。ズルい言い方だって思わない?」

「そうねぇ。チヨちゃんの気持ちも分かるけど、マコトちゃんに花を持たせてあげなさいな」

口を尖らせたあたしを宥めるように、にっこり笑んだユキちゃん。

「護身術なんて場慣れしてないと使えないんだから実用的じゃないのよ。アタシもあんまりオススメできないわね」
< 74 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop