愛は、つらぬく主義につき。 ~2
組の古狸ジジィ相手ならいくらでもあしらえる。本気にしないで、笑って適当に誤魔化して。・・・そうしてもよかった。

だけど彼をおざなりに扱いたくはない気がした。から。答えなかった。

「つれないね。なにも言ってくれないの?」

メンズ雑誌のモデルくらい整った顔立ちに吸い込まれるように。
黙って目を合わせただけのあたしの頬に指先を伸ばし、躊躇いもなく触れた。刹那。

「・・・宮子お嬢に余計なちょっかいはやめてちょうだい」

ユキちゃんの冷ややかな一刺しに、あっけなく離れてく。
ほんの数秒のできごと。現実だったのかもあやふやなほど。

「こんど俺の店にもおいで。メテオって言えば遊佐さんも知ってるはずだから」

スツールから降り立ち、スマートな仕草でジャケットの内ポケットから札入れを取り出す彼。

「今度はもう少しゆっくり話せるといいな。・・・藤代さん、彼女の好きなものを」

そう言って一万円札をカウンターに置き、ゆっくり閉まる扉の向こうにいなくなった。


淡い笑みと。半分も減ってないジンライムを置き去りに。
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