愛は、つらぬく主義につき。 ~2
あたしは泣いてたみたいだった。
悲しいも苦しいも痛いもなく、人形が目から水を流すようにただ虚ろに泣いてたみたいだった。

「宮子」

誰かが呼んだ。

「聞いて」

意思の通ってない躰を揺さぶられて、首の据わってない赤ん坊と同じくらいグニャリとしなる感覚。

「相澤代理は生きてる。簡単に()られるタマじゃねーのは知ってんだろ」

いき・・・てる。
ぼんやりと真の声をなぞる。

「・・・宮子を泣かせたって聞いたらあの人、死んで詫びるって言い出すんじゃねーの?」

濡れた頬を大きな掌が大雑把に拭い、そのまま両手で挟み込まれて間近にアイドル顔が迫った。

「しばらく知り合いの医者にかくまってもらうらしいから、一番しんどいのはオリエさんでオマエじゃないよ」

真っ直ぐな目力が電流になって躰中を突き抜け、あたしはやっと。回路を繋げた考える人間に戻れた。
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