愛は、つらぬく主義につき。 ~2
5-1
なかなか連絡がつかなかった藤さんからようやく折り返しの電話が来たのは、それから二日経った夜だった。

『・・・やることが色々あったんで』

耳に当てたスマホから聞こえる、遅くなったお詫びは淡々と変わらない様子で。あたしもほっと息を吐く。

「織江さん、どうしてますか・・・?」

躊躇いがちに訊ねれば、やっぱりいつもの口調で返る。

『中根由里子が来たんでマシっすね。あとは、メシに催眠剤(ミンザイ)ぶち込んで眠らせてるんで』

・・・事もなげに言われてるけど、相変わらず色んな意味で藤さんてなんかすごい・・・。

『ガキ共は、代理は仕事で帰れないって黙らせてあるんで』

しかも織江さんが言うより、雅ちゃん達には説得力ありそうだし。

「ほんとはあたしも織江さんに会いに行きたいんですけど、ごめんなさい、まだ外に出してもらなくて・・・」

『こっちはこっちでどうにかする。・・・まあヒマだったら、結城に電話してやって』

「します・・・! 毎日でもしますっ」

『・・・お嬢さんに任せる』

素っ気ない返事だったけど、気持ちは読み取れた。藤さんなりに精いっぱい織江さんを気遣ってること。
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