溺愛なんてされるものじゃありません
「じゃあ一人で飲み直しますよ。」

「一緒に酒は飲めないが…少し話というか相談がある。」

「相談?」

じゃあ寒いから部屋で話をしましょうと言ったのに、主任は頑なにお酒を飲んだ後に一緒の部屋に入れないと拒否するので、仕方なくマンション近くの公園のブランコに座り話を聞く事にした。

「寒いですね。それで話というのは?」

少しだけブランコを揺らしながら私は聞いた。

「実は、話の流れで清水さんと出かける事になったんだ。」

「出かけるってデートですか?へぇ、やったじゃないですか。」

主任と裕香、良い感じに話が進んでいるんだ。

「赤崎は清水さんと仲が良いんだろう?何処に出かけたらいいかな?」

「裕香は落ち着いた感じのデートが好みと思いますよ。」

「落ち着いた感じか…例えば?」

「そこは自分で考えて下さい。主任が計画したデートプランなら裕香は絶対喜びますから。」

私はニッコリして言うと、そのままブランコから降りた。

「主任、頑張って下さい。」

「あぁ。」

そして私達はそれぞれ自分のマンションへ帰った。

私は携帯を手に持ち、さっき買ってきた缶チューハイを飲む。

「あれ?着信入ってる。」

気づかなかったけど裕香から電話があったみたい。折り返し裕香に電話をかけ直した。

「もしもし。美織、家に着いた?」

「うん。今家に着いて缶チューハイ飲み直してるところ。どうしたの?」

多分、主任の事なんだろうけど私は知らないふりして用件を聞いた。

「平国主任の事なんだけど…なんか一緒に出かける事になっちゃった。どうしよう。」

「へぇデートするんだ。良かったじゃん。」

「良かった…のかな。」

「あれ?裕香、嬉しくないの?」

「まだ実感がないのかも。だってあの平国主任だよ?まさか私が彼とデートするなんて夢にも思わないじゃない?」

まぁ噂が噂だからなかなか実感なんて湧かないだろうな。

「頑張れ、裕香。」

その後、少し裕香と話をして電話を切った。

「裕香、いいなぁ。」

電話を切った後、私はテーブルに横顔をつけボソッと呟いた。

あれ…いいなぁって、私は何でこんな事思ったのだろう。

主任とデートするのが?いやそんなはずない。きっとクリスマスまでに彼氏が出来そうな裕香が羨ましいと思っているんだ。

…私も頑張ろう。

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