溺愛なんてされるものじゃありません
「そろそろ店出ようか。」

程よく酔いが回った頃、私達は店を出た。

「美味しかったですねぇ。」

「うん、そうだね。この後もう少しだけ付き合ってもらってもいい?」

「…どちらに?」

私の頭に昼間言われた朝までコースじゃない?って言うセリフが現れた。そんな…まさかね。

「近くにバッティングセンターがあって…って女性は興味ないよね。ごめん。」

「あー、バッティングセンターですか。行きたいです。ぜひ行きましょう。」

変な勘違いをしてしまって恥ずかしい。私は恥ずかしさを隠す為にガンガン歩き進んだ。

バッティングセンターに着くと、早速高成さんはスーツの上着を脱ぎ長袖のシャツをめくり上げる。そして勢いよく出てくる球を全部爽快に打ち上げた。

「うわぁ、凄い。」

「赤崎さんもやってみる?」

そう言われて私は高成さんと入れ替わり、バッターボックスに入った。実際にここに立つと迫力あるなぁと思いながら球が出てくるのを待つ。そして空振りの連続…。

「難しい〜。」

「しっかりバットを握って球をよく見て。」

ネットの後ろから高成さんがアドバイスをしてくれた。でもやっぱり空振りが続いて次が最後の一球。

カキーン

「当たった!」

思いっきり振ったバットに球が当たり、高く打ち上がった。後ろにいる高成さんを見ると『上出来』と言って親指を立てた。

疲れた私達はベンチに座ってスポーツドリンクを飲む。

「高成さん、もしかして野球経験者ですか?」

「うん。学生時代はずっと野球やってた。でも酒飲んだ後にバッティングセンターは違うね。順番間違えた。」

「あはは、本当ですね。」

笑う私を高成さんはじっと見つめてくる。

「赤崎さん、俺と付き合わない?」

「…えっ?」

告白…された?私は突然の告白に頭が真っ白になった。

< 15 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop