溺愛なんてされるものじゃありません
「…なんていきなり言われても困るよね。でも本気だから俺との事考えてくれると嬉しいな。」

「…は、はい。」

それから私は1人で家に帰る。高成さんは家まで送ると言ってくれたけど1人になりたかったし、タクシーで帰るから大丈夫ですと断った。

家の近くでタクシーを降りて、少し公園に立ち寄る。薄暗い外灯に照らされたベンチに座ろうかと思ったけど、何となくブランコのところへ行った。

高成さんに告白されて私は混乱していた。ブランコに乗って揺れながら、自分の気持ちを整理してみる。

高成さんから告白された。私にとって待望の彼氏…何も考えることないじゃない。告白を受けて付き合っちゃえばいいじゃない。今日だって楽しかったし。

なのに、私は何に悩んでいるの?

分からない…分からないけど…なんか今、凄く主任に会いたい。

気がつくと私は携帯を手に持って主任に電話をかけていた。

「もしもし赤崎?どうした?」

主任は私からの電話に不思議そうにしている。

「主任…ただいま。」

「ただいまって、家の中か?」

「残念。まだ家の前の公園でした。」

私、何言ってるんだろう。こんな事しても主任は困るだけなのに。

何故かしばらく沈黙が続く。呆れちゃったかな。下を向いたままため息をつく。

「赤崎。」

名前を呼ばれて顔を上げると、私の前に携帯を片手に持った主任がいた。走ってきたのか、切らした呼吸を整えている。

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