溺愛なんてされるものじゃありません
「あれ?ここは…。」

朝になり、私は目を覚ました。見慣れない風景に一瞬ハッとなってしまったけど…そうか、主任の家にお泊まりしたんだっけ。熱も下がったのか昨日ほどの怠さはない。私はベッドから降りてリビングへ行ってみる。

リビングにあるソファーを見ると主任が寝ていた。私はソファーの前でしゃがみ込み主任の寝顔を観察する。寝顔も整っているなぁと思いながら見つめていると、主任の目がパチっと開いた。

「赤崎、起きてたのか。おはよう…具合はどうだ?」

「おはようございます。昨日よりは全然元気です。ちょっと体の節々が痛いですけど。」

主任は私のおでこに貼ってある冷えピタを外し、自分の手をおでこに当てる。

「熱は下がったみたいだな。」

「ご迷惑をおかけしました。」

「いや、いつもと違う赤崎が見れて嬉しかったよ。」

主任は私を見てニッコリ微笑む。私は昨日の事を思い出し1人赤面した。

「あ、あの…忘れて下さい、全部。」

「何で?色々可愛かったのに。」

主任は目の前にしゃがみ込んでいる私の頭をポンっとする。

「せっかくだからゆっくりしていけよ。朝食準備するから一緒に食べよう。」

そしてテーブルの上にコーンスープとクロワッサンが並んだ。

「そういえばデートは上手くいったんですか?」

「…分からない。その話を赤崎に聞いてもらいたかったんだ。」

待ってましたと言わんばかりに主任はデートの様子を話し始めた。

最初に行ったのは映画館。裕香が見たいといった恋愛ものを見たそうだ。そしてイタリアンカフェでお昼を食べて、美術館へ…。夜も食事に誘ったけど、もう満足ですと言われてその場で解散したらしい。

裕香の好きそうな落ち着いた雰囲気のデートのように思えるけどなぁ。裕香は何で夜までデートしなかったんだろう。

「俺、何かやらかしたのか?それとも夜の食事に誘ったからいやらしい男と思われたのか…。」

デートを思い出して主任は落ち込んでる。

「そんな事ないと思いますけど。また月曜日にさりげなく裕香にデートの感想聞いてみますね。」

話をしながら朝食を食べ終えて、私は自分の部屋に帰った。

< 22 / 101 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop