溺愛なんてされるものじゃありません
夜になり、私は仕事帰りに主任の家に行く。一度自分の部屋に帰ってからにしようと思ったけど、珍しく私は残業で帰りが遅くなったので、そのまま主任の家にお邪魔した。

「遅かったな。」

「ちょっと残業で…。」

主任の部屋に入ると、テーブルには珍しくワインが置いてあった。そしてアボカドとトマトのサラダやスモークチーズ、ローストビーフなど美味しそうなおつまみ料理がオシャレに並んでいる。

「ワイン…今日はお酒飲むんですか?」

「あぁ、酒を飲みたい気分だからな。」

デートが上手く行かなかったのを忘れたいのかな?とりあえず私はコートを脱ぎ、テーブルの前に座る。

「赤崎はお茶でいいか?」

「お茶?ワインじゃなく?」

「お前は病み上がりだし…それに俺もそんなには飲まないつもりだから。」

「ずるい。私もワイン飲みたいです。こんな美味しそうな食事を前に飲むのを我慢なんてできません。」

全力で話す私に主任は少し困った表情をした。

「ずるいって言われても…やめとけって。」

「嫌です。」

「…少しだけだからな。」

「はい。」

私が笑顔を見せると、主任は私の分のワイングラスを持ってきて白ワインを注いでくれた。

「乾杯。」

ワイングラスで乾杯して早速一口飲む。

「あー美味しい。」

もう一口ワインを飲み、今度はサラダをパクッと食べる。

「赤崎はいつも美味しそうに食べるよな。」

主任はワインを片手に私を見て微笑んだ。
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