溺愛なんてされるものじゃありません
「だって美味しいですもん。あっワインおかわりしていいですか?」

美味しい料理とワインで上機嫌の私は、グラスに入ったワインをグィッと飲みきる。

「ペース早いな。飲み過ぎるなよ。」

主任は空になった私のグラスにワインを注ぐ。私はありがとうございますと言ってまたワインを飲み始めた。

「私、前から気になってたんですけど…主任って裕香の事好きなんですか?」

「清水さん?何でそう思う?」

「だって、デートしたりデートの結果を気にしたりしてるから。今日もデートの反省会するんでしょ?」

あーまただ。何で裕香と主任の事を考えると胸の奥がモヤモヤしてくるんだろう。私はモヤモヤを消したくてまたワインをグィッと飲む。

「そうか…俺とした事が。」

どうしたんだろう?主任は俯きながら何かを考えているようだ。私、何かまずい事言ったかな。

まだ少しグラスにワインは残っていたけど、私は主任のグラスにワインを注ぎ足す。すると主任はグラスに入ったワインをグイグイ飲み始めた。

「主任?」

「そうだ。俺は何て最低な事をしたんだ。」

「…と言いますと?」

「俺は彼女が欲しいが為に恋愛感情を持たないまま清水さんとデートしてしまった。失礼だよな。」

いや、裕香も恋愛というよりは憧れでデートしてるし、恋愛感情なくてもデートする人いるし。また主任の真面目な性格が現れたみたいだ。私の目の前でかなり落ち込んでいる。

「デートから恋が始まる事もありますよ。」

「…今回は始まる事なく終わったけどな。」

もう何て声をかけていいか分からない。デートの話はこれ以上はやめよう。

それよりも主任が裕香に恋愛感情を持っていないという事に私はなぜかホッとしていた。
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