溺愛なんてされるものじゃありません
「…高成とはどうなった?告白の返事はしたのか?」

デートの話を終わらせたと思ったら、今度は主任が私に聞いてきた。そして気がつくと主任の飲むペースが早くなっている。

「高成さんにはまだ返事していないです。」

「何で?」

「何でって言われても…。」

会話が一旦中断する。主任の真っ直ぐな視線が私に突き刺さり、私は言葉を失った。よく見ると酔っているのか、いつもに増して全身からフェロモンのような空気が溢れ出て、私の心臓がバクバクし始める。

「なぁ赤崎、高成はやめとけ。」

主任は真面目な顔つきで言うと、スッと立ち上がり私の隣に来た。

何?この前まで高成さんはいい人だって言っていたのに。それより何で私の隣に来た!?

もう何からつっこんでいいか分からない。

「高成さん、いい人だって主任言ってましたよね?」

私はさりげなく横に移動して主任から少し距離をとる。

「あぁ、高成はいいヤツだ。」

「…じゃあ何でやめとけって。」

主任はじりじりと私に近づいてくる。隣に来た主任の色香はハンパない。私はドキドキが治らなくて、座ったまま後退(あとずさ)りをする。

「なんか嫌だ。」

「嫌だってそんな子供みたいな…。」

冗談…だよね?私、からかわれているだけだよね?

でも主任はこんな冗談をする人ではない。後退(あとずさ)りする私に主任もじりじりと追いかけてくる。

そして、背中に壁がトンッと触れて私は追い詰められてしまった。私の至近距離に主任がいる。主任から溢れ出る色香のせいか、私は主任の顔を見たまま動けなくなってしまった。

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