溺愛なんてされるものじゃありません
「失礼します。」

営業企画課に入ると、みんな忙しそうに仕事をしている。そして嫌でも目に入る主任の姿…。

「お、来てくれたか。」

私達に気づいた営業企画課の課長がこっちに来るよう手招きしてくる。その課長の声に反応するかのように、主任がこっちを見て私の存在に気づいた。

私は主任と目を合わさないように課長の机まで歩く。

「いやぁすまないね。うちの課の女子達が昨日ご飯を食べに行ったのはいいが、そこで食べた牡蠣にあたってしまってね。みんな休んでしまって大変なんだ。今日はよろしく頼むよ。…おーい平国君。」

「はい。」

課長に呼ばれて主任がやってきた。

「今日は彼女達が事務の仕事を手伝ってくれる事になったから。」

「…分かりました。では早速入力の仕事をお願いします。こっちへ…。」

私と裕香は主任に連れられてパソコンの前に座る。そして渡された資料を見ながら入力を始めた。

「…よし終わりっと。」

入力が終わり、次の仕事を主任に聞きに行かなきゃいけない。今は仕事だし気まずいとか言ってる場合じゃないか。

「主任、入力終わりました。」

「仕事が早いな、ありがとう。次はこの会議資料を20部ずつコピーお願いしていいかな。」

「はい。分かりました。」

仕事なので表面上は冷静を装うが、主任を見るたび昨日の事が頭に蘇り、恥ずかしさでいっぱいになる。

主任はいつもと変わらないように見えるけど、意識したりしないのかな。

とにかく今は仕事に集中しよう。私はコピー機の前に行き、会議資料のコピーを始めた。

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