溺愛なんてされるものじゃありません
水族館の外へ出ると、あんなに天気が良かったのにいつのまにかどしゃ降りの雨が降っている。私達は傘を持ってないのでしばらく屋根のある入口付近で雨宿りをしていた。

「雨凄いですね。」

「そうだな。近くまで車持ってくるからここで待ってろ。」

主任は雨に濡れながら走って車まで行く。そしてしばらくして主任の車が入口付近まで来た。私は走って車に乗り込む。

「濡れちゃいましたね。主任、大丈夫ですか?ちょっと待って下さいね。」

私はさっき水族館で買ったイルカのタオルを取り出した。主任は取り敢えずまた空いている駐車場へ車を止める。

「じゃん。このタオル使って下さい。」

そう言って私はタオルを主任の濡れた髪の毛に乗せた。

「ありがとう。でも赤崎も少し雨で濡れてるな。」

主任は自分の髪を拭く前に、タオルを私の頭に乗せて濡れた髪を軽く吹き始める。

「あ、ありがとうございます。」

タオル越しに髪に触れられて私はドキドキしていた。落ち着け、私。恥ずかしさから私は下を向いた。

「赤崎。」

主任に呼ばれてパッと顔を上げる。顔を上げると至近距離に主任の顔があった。そして…主任の唇が私の唇に重なる。

雨に濡れたせいか、私に触れた唇は冷んやりしていた。でも次第に唇は熱くなり、濡れた髪からは雨の雫が私の顔にぽつんと滴り落ちる。

ゆっくりと唇が離れ、そのまま私を抱きしめた。外はまだ雨が降り続いていて、車のフロントガラスには雨のカーテンが出来ている。

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